8月5日(木) 雨のち曇り。景鶴山を越えて大白沢池まで
site1 445(1.5P)600 与作岳 615(2P)815 景鶴山 840(3P)1140 カッパ山 1205(1P)1315 大白沢池 site2
3時に起きて飯をつくる。インスタントものは嫌なので、味噌汁をきちんとつくる。味噌汁の具は、行動中に採った山菜でまかなうつもりであったが、8月では山菜の季節は過ぎており、ちょっと固めのコシアブラの葉っぱと、笹の芽くらいしか手に入らなかった。しかし、はっちゃんの持ってきてくれた切り干し大根のおかげで結構リッチな感じに出来上がる。僕は切り干し大根が好物なのである。
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| サイト場付近のもろやぶを進む |
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根曲がりの笹やぶをひたすらこぐ
行動を開始したのが5時前。天気は小雨で、薄暗いヤブを雨具をつけて進んでいく。与作岳は景色も見えず、イモ山だった。
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与作は木を切る...
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| 景鶴へのささやぶを進む |
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ささやぶにそぼろ降る雨
景鶴は、ぼくがトップで討たせてもらった。この山は靴べらを立てたような形の岩峰で、地図では三日月のような等高線で表現されている。三日月の弦に当たる部分は尾瀬ガ原を向いて切り立った屏風状の崖になっており、天気が良ければ尾瀬が原が一望のもとに見渡せたはずだ。しかし、ガスが濃くて何も見えなかった。尾瀬が原が見えなかったのも残念だったが、それよりむしろ「本当のカッパ山」を見損なったのが実に口惜しい。この「本当のカッパ山」というのは、景鶴山と大白沢山を結ぶ稜線のふもとに広がる広大な湿原地帯の真ん中にある1822mピークのことで、カッパのお皿のような大きくなだらかな山である。尾瀬が原の北側に一段高く高原状に広がっているので、尾瀬が原からは見ることができない。地図で見ると見事な火山地形で、その一面に湿原マークが付いている。火山と積雪の芸術的合作で、さぞかし楽しく、美しい眺めであったろう。これを見る再度と無いチャンスを逃がしたのが、重ねがさね残念であった。景鶴山頂のガスの中で寒々とした記念写真を撮る。しかし、みんなの表情は明るい。これくらいの悪天候は、へっちゃらなのだ。
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| 景鶴山山頂 |
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景鶴山の感想は?
景鶴とカッパ山の間の、1898mピークのあたりが今日のサイト予定地である。しかし隊のペースが速いのでサイトを進めることにする。みんなで地図を見て、大白沢池に行ってみよう、ということになった。大白沢池は深い森に囲まれた小さな池で、もちろん道などついていない。ヤブを漕いで行くか、そうでなければ飛行機の窓からしか見ることのできない幻の池である。この幻の池をどうやって見つけだそうか協議する。2万5千分の一地形図の等高線の微妙な変化から、カッパ山の西のコルを源頭にして西北西に落ちる小沢があるだろうと判断して、それをたどって大白沢池にたどりつくことにした。こういうミクロな地図読みは、みんなお手のものである。カッパ山西コルでコンパスの角度を合わせ、濃い笹ヤブをガシガシと落ちていく。声の届く範囲でメンバーが散らばって、目的の小沢を探して下っていく。おーい、そっちはどうだ?、ホーヤ、ホーヤ、まだ出ないぞー、もう少しじゃねーか、そろそろだよなー、このへんだよなー、などと声を掛け合って下っていくうちに、いかにもこれだ!という沢の源頭を発見した。深いヤブの中にさらさら流れる小さな沢は、いいものである。おいしい水が、森のエキスのようにして湧き出している。この沢が、たいしたヤブ漕ぎもなく我々を大白沢池まで導いてくれるであろう。コンパスで方向を確認しながら沢を下る。みんなの靴の中はもともと雨のヤブ漕ぎでぐしょ濡れになってしまっていたので、構わず流れの中をじゃぶじゃぶ歩いて行った。ところが、そろそろ池に出るかなと思うあたりで沢は伏流になってしまい、またヤブ漕ぎを強いられる。地面の傾斜から判断して、現在地は池のやや北東かと思われたので、真西から少し南寄りにコンパスをきって深いヤブを漕いで行くと...。あった!
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| 大白沢池 |
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感動の言葉!
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| 大白沢山 |
じゃんじゃじゃーん!ついに来ました幻の池、われら桃源郷を発見せり、という感じで、素晴らしい湿原のお花畑と静寂の湖面が僕らを迎えてくれたのである。いやあ、明るい明るい。さっきまで陰鬱なヤブを漕いでいた僕らの目には、このお花畑の輝きはまぶしすぎるぜ。大白沢池の大きさは直径70メートルくらいだろうか。冬には深い雪に埋もれてしまう池の水は、そのまま飲めそうなくらい澄んでいる。折りしも今朝からの雨は止み、薄日が射してお天気の演出も最高だ。湿原を踏みつけないように注意して池の北西のほとりに回り、眺めの良い薄い笹ヤブに本日のサイトを張った。飯つくりを始めるには時間がまだ早いので、みんな思い思いに濡れた雨具や靴下を干したりしながら桃源郷のさわやかな空気を満喫する。人跡未踏のこの楽園の素敵なことは、観光地化した尾瀬が原のそれとは比較にならない。尾瀬のハイカーたちには気の毒だけれど、イギリス王室の朝食に供されるダージリンティーと、リプトンのティーバッグくらいの違いがあると思うのだ。ふっふ。
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| またずれの手当をする人 |
晩飯は、カマドでクリームシチュー。連日の雨で薪が濡れていて少々手こずったけれど、僕らはカマドのプロであるからして心配は要らない。飯を食った後、おき火になったカマドを囲んで歌会をする。このメンバーの連帯感は、ちまたのカラオケ大会とは次元が違う。ぐしょ濡れになってヤブを漕いできた僕らの姿はみすぼらしいけれど、ボロは着てても心の錦、なのである。
Last modified: Sat Sep 16 17:20:03 1995
Suto Taku